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ゲーム紹介:アクロポリス


このゲームの舞台は地中海。プレイヤーは建築士となり、任された街の建設を、タイル配置により行っていきます。タイルは重ねておくこともでき、高い層に置いたタイルほど多くの点数をもたらしてくれます。しかし、高い層に置くと、その下にあるタイルは埋まってしまうため、どのタイルの上にタイルを重ねていくのか、ということが極めて重要になります。

出版社は、Gigamic。と聞いて、違和感を覚えられるボードゲーム好きの方もいらっしゃるかもしれません。Gigamicの主力ラインといえば、『クアルト』、『コリドール』など2人用の木製ゲームがおなじみだからです。しかし、『マラケシュ』もGigamicのゲームだと言われれば、納得するところもあるかと思います。Gigamicは年に1作のペースで、今回紹介する『アクロポリス』のようなファミリーゲームを継続してリリースしている出版社なのです。これまで、このファミリーゲームシリーズでは『マラケシュ』以外にヒット作は無かったのが正直なところですが、この『アクロポリス』は、2022年UKゲームExpoにおいて、ファミリーゲーム部門での大賞を受賞、エッセンシュピールでも注目作として事前から挙げられており、会場での出口投票であるスカウトアクションでも 上位に食い込みました。

作者はJules Messaud。この作品が処女作となる、新人デザイナーです。『アクロポリス』がヒット作となり、今後の作品にも非常に期待が持たれています。

どこかで見たことあるようなタイル

『アクロポリス』は、ドラフトしたタイルを配置し、最終的な出来上がりに対して、規定に従った点数計算を行うという、オーソドックスな点数計算ルールです。タイルは六角形を3つつなげた形をしており、Hans im Glück社の往年の名作『Taluva』を思い出される方もいらっしゃるかと思います。

スタートタイルと、ドラフトするタイル

ドラフトしたタイルは、六角形を4つつなげた形をしたスタートタイルに、少なくとも1辺が隣接するように置いていきます。ですので、例えば

タイル配置の一例

このように配置しても良いですし、極端な話、

1辺だけが隣接する例

最低1辺が隣接していれば良いので、このような配置でも構いません。
このようにタイルの配置については非常に自由なルールとなっています。

どこかで見たことあるドラフトルール

ドラフトでは、ディスプレイにプレイヤー人数+2枚のタイルが並べられており、それをスタートプレイヤーから順に1枚ずつドラフトして配置していき、スタートプレイヤーが2枚目をドラフトして配置するまで続きます。そして、プレイヤー人数+1枚が補充され、スタートプレイヤーが移り、ドラフトをする、、、とゲームが続いていきます。

スタートプレイヤーが2枚目を取るまで続くというドラフト形式は、偶然にも同日に発売する『ジャンヌ・ダルク-オルレアン ドロー&ライト』でも採用されています。また最近のゲームでは『フレームワーク』においても採用されていましたのでなじみのある方もいらっしゃるかと思います。これら2つのゲームでは、すべてのタイルへのアクセスにコストがかからなかったのですが、『アクロポリス』においては違います。
『アクロポリス』においては、ディスプレイに並べられたタイルには順番があり、遠くにあるタイルを取るには、石材というこのゲームの中に出てくる唯一の資源を1タイル遠くなるたびに1個支払わないといけません。

ドラフトのためディスプレイされたタイル(4人プレイ時)

この、遠くにあるタイルに対して、アクセスコストがかかるというルールは、『アクロポリス』では随時のタイル補充が無いという違いはあるものの、『センチュリースパイスロード』や『キャンバス』などでなじみのあるルールです。また、『アクロポリス』ではこれらのゲームと違い、支払う石材は、飛び越したタイルの上に置くのではなく、サプライへと戻します。

このサプライに戻るというルールですと、プレイが進むにつれて、石材がどんどん減っていってしまうため、選択肢が減っていくことになります。が、このゲームではタイル配置ゲームでよくみられる、タイルを"重ねる"というアクションを上手く生かした石材の補充システムを搭載しています。

どこかで見たことのあるタイル重ねのルール

タイルが配置され、広がっていくと、タイルを重ねることができます。タイルをより高い層に置く場合、3つのマスを覆うように、かつ複数のタイルを覆うように置く必要があります。逆にこの制約を満たしているならば、どのタイルにも重ねることができます。このタイルの重ね方のルールは『ナンバーナイン』の制約条件と同じですが、タイルの形状がシンプルな分、かなり制約が緩く感じられます。
そして、このタイルを重ねる際に、石材を生み出す白色の採石場マスを覆うようにタイルを置くことで、覆った採石場マス1マスあたり1つの石材が生み出されるのです。

中央に採石場マスが3つタイルの形に並んでいる。
そこをドラフトしたタイルで覆うことにより、石材を3つ得ることができる

このように、タイルを重ねることでリソースが生み出される採石場を、うまく配置して、その上に積極的にタイルを重ねていくことになります。

点数計算もどこかで見たことがある

点数計算も、どこかで見たことがある計算方法です。このゲームの中には、5色の街区の種類が出てきます。このゲームにおいての点数計算は、街区のマス数×得点倍率という計算方法で算出されます。2017年SDJ受賞作の『キングドミノ』をイメージしていただくのが非常に判りやすいかと思います。

この場合、青の街区の点数は2×10の20点

得点倍率を決めるのは、このゲームの中では"広場”と呼ばれる、★が書かれたタイルです。上の写真では★が1つ書かれている青の広場が2マスありますので、倍率がになります。

街区のマス数は、5色それぞれに定められた、固有の得点条件を満たしたマスのみをカウントできます。青の得点条件は、「もっとも大きなグループを形成しているマスだけをカウントする」というものです。上の写真の場合は中央にある大きな連続した青のマスで、8マスあります。そして、最大のポイントが、2層目にあるタイルは2マス、とカウントすることができるということです。このルールも『ナンバーナイン』に見られたルールです。今の場合、2層目にあるタイルが2つありますので、8マスではなく(1×6+2×2)=10マスとカウントすることができるのです。これにより、2×10=20という点数が算出できました。
このように、『アクロポリス』においては、
・石材を得るため
・マスの得点を上げるため
の2つの理由から、積極的にタイルを重ねていく必要があります。まさに、ギリシャの実際のアクロポリス同様に、小高い丘をより上手く形成できたプレイヤーが勝利するでしょう。

また、各色の得点条件は下記のとおりです。
青:最大のグループを形成しているマスだけをカウントする
黄:黄同士で隣接していないマスだけをカウントする
赤:外周に面しているマスだけをカウントする
紫:外周に面していないマスだけをカウントする
緑:どこにあってもカウントできる

このような、得点計算を5色それぞれについて、(倍率)×(固有の得点条件に沿ったマス数)で行い、5色分を足し合わせ、最後に余った石材を1個1点としてカウントし、足したものが最終得点となります。

上級ルールも用意されており、それは、さらに厳しい制約を満たしたタイルについては、2倍のマス数と数えてよいというものです。まずは、基本ルールで遊んでみて、物足りなさを感じた場合は、上級ルールでプレイすることをお勧めします。

すべてどこかで見たことあるルール、しかしプレイ感は新しい

このように、『アクロポリス』のルールをシステム1つ1つを見ていくと、すべて、どこかで見たようなシステムとなっています。しかし、これらをバランスよく組み合わせたことで、これまでにないプレイ感のゲームに仕上がっています。これまでのゲームも十分に参考にしたうえで組み上げられた、タイル配置の新定番となりうるこのゲームをぜひ楽しんでいただければと思います。
タイルも非常に厚みがあり、充実したプレイ感をもたらしてくれるでしょう。

こんな人には合わないかも

ルールが非常にシンプル、かつ、これまでにあったメカニクスの組み合わせのため、
・新しいメカニクスのゲームを探し求めている
という方には、合わないかもしれません。また、配置に関する制約が非常に少ないゲームのため、選択肢が膨大となりますので少し長考気味になってしまうこともあるかと思います。

最後に

2022年エッセンシュピールにおいて、Engamesが最も注目していた作品が、今回紹介した『アクロポリス』です。というのも、初夏にこのゲームを見つけて、研ぎ澄まされたされたルールと、悩ましいプレイ感に惚れ込み、すぐに契約。夏にはローカライズの作業を終え、年内発売の主力商品に決まっていたからです。
残念ながら、秋のゲームマーケットでの発売とはできませんでしたが、年内に間に合い12月24日に発売できることとなりました。
この記事を書いている2022年12月2日現在で、Boardgamegeekランキングは1551位となっています。このゲームは現在、フランス、イギリスおよびアメリカのみで流通しており、その他の各国への流通はこの年末から本格的に始まります。エッセンシュピールでも話題となり、今後世界各国で話題となるであろう『アクロポリス』をぜひ遊んでいただければと思います。


ゲーム名:アクロポリス
プレイ人数:2〜4人
対象年齢:8歳~
プレイ時間:25分


参照したゲーム

  1. 『クアルト』https://boardgamegeek.com/boardgame/681/quarto

  2. 『コリドール』https://boardgamegeek.com/boardgame/624/quoridor

  3. 『マラケシュ』https://boardgamegeek.com/boardgame/29223/marrakech

  4. 『Taluva』https://boardgamegeek.com/boardgame/24508/taluva

  5. 『ジャンヌ・ダルク-オルレアン ドロー&ライト』https://boardgamegeek.com/boardgame/364641/joan-arc-orleans-draw-write

  6. 『フレームワーク』https://boardgamegeek.com/boardgame/353152/framework

  7. 『センチュリースパイスロード』https://boardgamegeek.com/boardgame/209685/century-spice-road

  8. 『キャンバス』https://boardgamegeek.com/boardgame/290236/canvas

  9. 『ナンバーナイン』https://boardgamegeek.com/boardgame/217449/nmbr-9

  10. 『キングドミノ』https://boardgamegeek.com/boardgame/204583/kingdomino


#ボードゲーム

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