2009/5/2 赤桐
ドイツで1760年頃から今世紀初頭までプレイされていたタロットカードのゲームです。トリックテイキングゲームです。先に紹介したデンマーク・タロットと同じようなゲームですが、それより古いゲームのようです。
ルールはMichael Dummett氏の"Twelve Tarot Games"という本を基にしました。
3人
カードの種類については、別項のタロットのカードについてをごらんください。通常の78枚のタロットカードをすべて使用します。スートはスペード、ハート、ダイアモンド、クラブです
各スートのカードを強い順に列挙すると、スペードとクラブ(あるいはソードとバトン)では:
キング,クイーン、カバロ、ジャック、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1です。
ハートとダイヤモンド(あるいはカップとコイン)では:
キング、クイーン、カバロ、ジャック、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10です。
切札では、21が最も強く、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1と数字が小さくなるにつれ弱くな ります。切札1は「パガット(Pagat)」と呼ばれます。
愚者のカードのことをドイツではスキュース(Sküs)と呼びます。
最初のディーラーは任意の方法で決めます。次回からは時計回りの順に交代します。
ディーラーは、ディーラーの左隣のプレイヤーから、時計回りに、各プレイヤーに5枚ずつ5回配り、手札が25枚になるようにします。さらに残った3枚のカードもディーラー自身に配ります。
ディーラーは自分の手札から3枚を選んで裏向きに捨て札します。捨て札されたカードはディーラーがプレイで取ったカードと同じに扱われます。
捨て札には次の制限があります:
各プレイヤーは手札に次のような組み合わせのカードがあれば宣言することができます。 宣言はディーラーから始めて時計回りに1人ずつ行います。宣言をするときに手札を見せる必要はありません。宣言するものがなければパスと言います。
宣言するかどうかは自由ですが、実際の枚数より少ない枚数を宣言することはできません。
同じカードをさまざまな宣言の一部として使うこともできます。
手役宣言をすると、そのゲーム点をほかのプレイヤーそれぞれからもらうことができます。
手札に10枚以上の切札があるときに宣言できます。このときに限り、スキュースは切札とみなされます。何枚持っているかを宣言します。このときパガットを持っているかどうかと、スキュースをもっているかどうかも言わなければなりません。
点数は10枚で10ゲーム点、1枚増えるごとに5ゲーム点ずつ増えます。
スキュース、切札21、パガットの3枚を持っていたらマタドールになります。
この3枚だけを持っていたら3枚マタドール、切札20も持っていたら4枚マタドール、さらに切札19も持っていたら5枚マタドールというようになります。つまり、切札21から下に連続する切札の枚数分、マタドールの枚数が増えます。
逆にパガット(切札1)から上に連続することも可能です。切札21から下に連続するものと、パガットから上に連続するものの両方があってもかまいません。例えば、スキュース、切札21、パガットに加えて、切札20と切札19を持っている場合も、切札2と切札3を持っている場合も、切札20と切札2を持っている場合も、すべて5枚マタドールになります。
点数は3枚マタドールで10ゲーム点、1枚増えるごとに5ゲーム点ずつ増えます。
マタドールの一種ですが、連続するカードを調べるとき、1つ飛んでいても連続すると考えて計算することができます。このとき「スキュースのマタドール」と宣言します(正確には「跳躍するスキュースのマタドール」で、スキュースが1つ飛びを手助けしているように考えます)。
例えば、スキュース、切札21、パガットを持っていて、切札20を持っていなくて、切札19を持っている場合。5枚のスキュースのマタドールになります(このように、飛んでいるカードも枚数に入れます)。
2枚以上飛んでいる場合、たとえば切札20、切札19を持っていなくて、切札18を持っているような場合は、スキュースのマタドールにはなりません。
しかし、1枚飛びであれば、2か所以上あってもかまいません。切札21、切札20、切札18、切札16、となっている場合は8枚のスキュースのマタドールになります。
もちろん、パガットから上につながる場合も、1つ飛びが可能です。
点数は3枚のスキュースのマタドールを5ゲーム点と考えて、1枚増えるごとに5ゲーム点ずつ増えます。
マタドールとスキュースのマタドールを同時に宣言することはできません。
この宣言においては、4枚のキングに加えてスキュースと切札21とパガットもキングとして数えます。
点数は3枚のキングが5ゲーム点、1枚キングが増えるごとに5ゲーム点ずつ増えます。
スキュースと切札21とパガットを持っていて本当のキングを持っていなくても、マタドールの宣言だけでなく、キング3枚の宣言も行うことができます。
1つのスートの4枚の絵札(キング、クイーン、カバロ、ジャック)を持っているとき宣言できます。どのスートであるかを言う必要はありません。10ゲーム点です。(2つ以上のスートについて宣言することもできます。)
キングと、その同じスートのクイーン、カバロ、ジャックのうち2枚だけと、スキュースを持っているとき宣言できます。5ゲーム点です。(2つ以上のスートについて宣言することもできます。)
クイーンを4枚持っているときに宣言できます。5ゲーム点です。
カバロを4枚持っているときに宣言できます。5ゲーム点です。
ジャックを4枚持っているときに宣言できます。5ゲーム点です。
切札でも絵札(キング、クイーン、カバロ、ジャック)でもないカードを16枚以上持っているときに宣言できます。スキュースもこのなかに数えることができます。
16枚のとき15ゲーム点です。1枚増えるごとに5ゲーム点増えます。
プレイはトリックテイキングゲームの原則に従って行われます。プレイの順序は時計回りです。
最初のリードは、ディーラーの左隣のプレイヤーが行います。フォローの義務は次のようになります。
切札がリードされた場合:
切札以外のカードがリードされた場合:
トリックに勝つのは、通常通り、切札がプレイされていれば最も強い切札をだしたプレイヤー、切札がプレイされていなければリードされたスートで最も強いカードを出したプレイヤーです。
トリックに勝ったプレイヤーが次のリードを行います。
スキュースは、上記のカードの出し方の規則をすべて無視して、いつでもプレイすることができます。
スキュースをリードするときにはどのスートのリードになるかを宣言しなくてはなりません(切り札のリードということにしてもかまいません)。ただし、他の2人のプレイヤーが宣言されたスートを持っていない場合、このスートの宣言は無効になります。このため、スキュースのリードがあって、次のプレイヤーが宣言されたスートを持っていない場合、そのプレイヤーはプレイの前に3番目のプレイヤーにそのスートを持っているかをまず聞かなければなりません。3人目も持っていなくてスート宣言が無効になったら、2番目のプレイヤーは、どのカードでも出すことができます。この場合は2番目のプレイヤーの出したカードのスートを、リードされたスートとして扱います。
スキュースをプレイしたプレイヤーは、トリックには必ず負けます。しかし、スキュースはトリックに勝ったプレイヤーのものにはならず、スキュースを出し たプレイヤーのものになります(手札に戻るわけではなく、取ったカードと同様に扱われます)。スキュースを出したプレイヤーはその代わり、今まで取ったカードの中で最も点数の低いカード1枚を勝ったプレイヤーに渡します(0点のカードでもかまいません)。もしまだ取ったトリックがなければ、自分の前にスキュースを表向きにしておき、次にトリックに勝った時にその中から最も点数の低いカード1枚を渡します。(ディーラーは捨て札の中からカードを渡すことはできません。)
ただし、次の場合にはスキュースはトリックに勝ったプレイヤーのものになります。
パガットをプレイして、勝った時は、そのプレイヤーは他の2人のプレイヤーから5ゲーム点ずつもらいます。負けた時は、5ゲーム点ずつ支払います。最後のトリックでパガットをプレイした時は、勝ち負けともに、15ゲーム点ずつになります。
キングをプレイして、勝った時は、そのプレイヤーは他の2人のプレイヤーから5ゲーム点ずつもらいます。負けた時は、5ゲーム点ずつ支払います。最後のトリックでキングをプレイした時は、勝ち負けともに、10ゲーム点ずつになります。
最後のトリックにパガットもキングも含まれていない場合、勝ったプレイヤーは他の2人のプレイヤーから5ゲーム点ずつもらいます。
全25トリックを1人で取った場合、そのプレイヤーは他の2人から26ゲーム点ずつもらいます。
最初のリードが行われる前(手役の宣言の後)にボレをすることを宣言して成功したら、26ゲーム点の代わりに52ゲーム点ずつもらいます。
13トリック目のリードが行われる前にボレをすることを宣言して成功したら、38ゲーム点ずつもらいます。20トリック目のリードが行われる前にボレをすることを宣言して成功したら、31ゲーム点ずつもらいます。
ボレを宣言して失敗したら、上記のゲーム点(52ゲーム点、38ゲーム点、31ゲーム点)を他の2人それぞれに支払います。
1人のプレイヤーが1トリックも取らず、他の2人はそれぞれ1トリック以上取っていた場合は、1トリックもとらなかったプレイヤーが他の2人から26ゲーム点ずつもらいます。
このプレイヤーがプレイの時にパガットやキングを出して負けたために支払ったゲーム点は返してもらいます。また、ほかのプレイヤーがパガットやキングを出して勝ったために支払ったゲーム点も返してもらいます。(他の2人の間でやりとりしたゲーム点はそのままです)。
最初のリードが行われる前(手役の宣言の後)にヌルを宣言して成功したら、26ゲーム点の代わりに36ゲーム点ずつもらいます。13トリック目のリードが行われる前にヌルを宣言して成功したら、31ゲーム点ずつもらいます。
ヌルを宣言して失敗したら、最初のリードが行われる前の宣言なら10ゲーム点、13トリック目のリードが行われるの宣言なら5ゲーム点を、他の2人のプレイヤーそれぞれに支払います。
最後にカードの点数による得点を計算します。ボレやヌルが成功した時はこの得点はありませんが、ボレやヌルの宣言があって失敗した場合も、この得点を計算します。
各カードの点数は次の通りです。
切札21 | 5点 |
パガット(切札1) | 5点 |
スキュース | 5点 |
キング | 各5点 |
クイーン | 各4点 |
カバロ | 各3点 |
ジャック | 各2点 |
上記以外のカード | 0点 |
取ったカードを3枚1セットにして、それぞれのセットにつき次のように点数を修正します(どのようにセットを作っても結果の点数は変わり ません)。
点数のあるカード3枚 | マイナス2点 |
点数のあるカード2枚とないカード1枚 | マイナス1点 |
点数のあるカード1枚とないカード2枚 | 修正なし |
点数のないカード3枚 | プラス1点 |
すべての点数の合計は必ず78点になります。
各プレイヤーは自分の取った点数から26点(3人の平均点)を引きます。これがプラスまたはマイナスのゲーム点となります。例えば40点ならば得点は40-26=14ゲーム点、18点なら得点は18-26=マイナス8ゲーム点となります。
カードの点数は本来は下記のようなもので、これに1トリック勝利につき1点を加えます(ディーラーの捨て札に対しても1点加えます)。結果は本文のものと同じになります。
切札20(天使) | 4点 |
切札1(バガット) | 4点 |
愚者(マット) | 4点 |
キング | 各4点 |
クイーン | 各3点 |
カバロ | 各2点 |
ジャック | 各1点 |
上記以外のカード | 0点 |
しかし、本文のようにしたほうが慣れると計算が速いので、実際にはそのようにしています。
詳しくは、スカルトの注を参照してください。
2009年5月2日、なかよし村でプレイしました。
面白く遊べましたが、キングやパガットを取るという目的と点数を取る目的があり(必ずしも矛盾するわけではないですが)、やや興味が散漫になるような気がしました。